空気録音との合わせ技 コンサートホールをさながらに IMPRESSION 3 ~ティアックレコーディングクラブ ダウンロード音源紹介~

スタジオ録音でコンサートホールをさながらに

さきのブログではスタジオ1812の空気録音との合わせ技で、20帖のAホールが大きな空間に変える技についてご紹介しました。
今回のIMPRESSION 3でも同じくコンサートホールで演奏されている様子が思い浮かびます。曲が始まる前の空間的なノイズもその雰囲気を掻き立て、よりライブ感が伝わってきます。鋭いバイオリンと優しいピアノがとても聴き心地がよいバランスとなっていると思いながらも、実際の演奏会ではここまではっきり楽器ごとに分かれて聴くことができず、これは録音の妙だろうとあれこれ感じながら聴き入っておりました。

さて、ミュージックテープに添付されているインデーカードの一つの写真をみて、演奏者の距離が近く、パーテーションもないことに驚きました。
録音には当社のマルチレコーダーが使われていて、それぞれの楽器を複数のマイクで録音して、さらに空間要素も加えてうまくバランスをとって仕上げているということまでは前回教えていただいたのでわかっていたことですが、いくらマルチレコーディングでも、マイクのかぶりについては起こってしまってはなすすべがないはずです。

同じ空間で演奏するとお互いのマイクに両方の楽器が録音されてしまいますが、この写真の場合、ピアノはマイクとの距離が近く、さらにバイオリンより大きな音がするので条件は有利、一方バイオリンはピアノに比べて音が小さい上に、マイクとの距離もあり条件は不利、バイオリンがピアノに埋もれてしまいそうなのによくここまでくっきりバイオリンを浮かび上がらせたものだと感心しました。


後日の取材で教えてもらいましたが、バイオリン用に設置されたマイクの使い方に秘密があるとのことでした。
マイクには指向性が選べる機能があるものがありますが、今回はその機能が有効活用されています。
バイオリン用のマイクの指向性を双指向性に設定し、マイクのカバーエリアをより直線的にすることで、サイド成分を大きくカットしているとのことです。
このことで、ピアノのかぶりを抑えているとのことでした。また、機器の特性を十分に生かせるように演奏者にも演奏方法についてリクエストするなどの工夫もしているとのことでした。自由な演奏とそのままの録音では、曲の盛り上がりとともに体が思わず動いたり、力が入ったり、このことで演奏そのものはより感情的なものになるかもしれませんが、録音機器側の適正なカバーエリアや適正なレベルから外れたりであとのミックスダウン作業に悪い影響が出てしまう可能性もでてきます。このようなことがないように演奏者と録音エンジニアの双方で仕上がりを意識して制作に取り組んでいるとのことでした。演奏者のレベルの高さとエンジニアの録音へのこだわりがここでも感じられます。
パーテーションなど障害物のない空間で演奏者はストレスを感じずに演奏できることや不要な反射物の影響を受けないことなどの効果もコンサートホールのライブ感につながっているのでしょう。

使用機材とシステムについて

マイクやマイクプリアンプも有名な機種が使われています。マイクはNeumannU87・184 AKG414 など計12本を使用して、VL2ch PF ON6ch Top4ch にて設置、Forcusrite 製のマイクプリアンプなどを使用しているとのことでした。
レコーダーにはオープンリールデッキが使われています。マルチトラックレコーダーTASCAM「ATR-60-16」で12本のマイクを別々に録音し、マスターデッキTASCAM「42B」にミックスダウンするというアナログづくしの仕上げとなっています。さらに特徴的なのが、このアナログレコーダーはデジタルレコーダーと完全同期したシステム下におかれており、しっかり時間管理がなされているこだわりがあります。


マルチトラックレコーダー TASCAM ATR-60-16

2トラックレコーダー TASCAM 42B


オープンリールテープは 『RECORDING THE MASTERS』 を使用

本作品はダウンロード音源の販売に加えて、ミュージックテープも販売いたしております。ぜひ、ご利用くださいますようお願いいたします。


本記事でご紹介した録音手法や音源についてポッドキャストでもご紹介しています。
ぜひご試聴ください。



-音源紹介-

◆16bit/44.1kHz音源◆
IMPRESSION 3  → 1,760円(税込)

1. 美しきロスマリン / クライスラー
2. プニャーニの様式による「プレリュードとアレグロ」 / クライスラー
3. 愛の悲しみ / クライスラー
4. ヴァイオリンソナタ第5 番 ヘ長調 Op.24『春』 / L.v. ベートーヴェン
 4-1. 第1 楽章 アレグロ
 4-2. 第2 楽章 アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ
 4-3. 第3 楽章 スケルツォ:アレグロ・モルト
 4-4. 第4 楽章 ロンド:アレグロ・マ・ノン・トロッポ
5. タイスの瞑想曲 / マスネ
6.  FAE ソナタ 第3 楽章 スケルツォ WoO.2 ハ短調 / ブラームス

録音時間:約46分

ぜひ、ヘッドホンでお楽しみください。


サンプル動画はこちら






■高崎真央プロフィール

4 歳よりヴァイオリンを始める。大阪音楽大学卒業、卒業演奏会に出演。在学中、大学より給付奨学金を得てドイツ国立ワイマール・フランツリスト音楽院、またフォルクヴァング芸術大学( ドイツ) に留学。これまでにヴァイオリンを久合田緑、辻久子、宗倫匡、北浦洋子、ウルリヒ・ベーツ、ヤチェック・クリムキェーヴィッチの各氏、バロックヴァイオリンを平崎真弓氏、室内楽をエフゲニー・シナイスキ、クラウス・シュトルクの各氏、ビオラを深井碩章、俣野ゆみの各氏に師事。第三回全日本芸術コンクール第二位。第三回クオリア音楽フェスティバルオーディション大学生の部第一位。スーパーキッズオーケストラ第一期生。2014 年~2018 年、ドイツ・ブラウンシュヴァイク州立管弦楽団に所属。

■吉岡麻梨プロフィール

兵庫県立西宮高校音楽科卒業。武庫川女子大学器楽科ピアノ専攻首席卒業。中学生時西宮交響楽団・大阪交響楽団と共演。大学時アメリカインディアナ州にて、ピアノコンチェルトを共演。YAMAHA 演奏指導グレード4 級。ピティナ指導協会会員。故井上直幸 志水英子 ボリス・ベクテレフ 蔀幾世子 林敦子各氏に師事。我が子の成長と共に、現在は四世代コンサートを実施。初の緊急事態宣言後1 年間、Instagram にてほぼ毎日動画コンサートを配信し、コンサート依頼を受ける。現在は100 万人のクラシックライブ関西エリアスタッフ& ピアニストとしてコミュニティの活性化と後進の育成に力を注ぐ。故井上直幸 志水英子 ボリス・ベクテレフ 蔀幾世子 林敦子各氏に師事。

- 取材ご協力 -

スタジオ1812では本作品のDSD、24bit/96kHzのハイレゾ音源をUSBメモリにて販売しております。

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