箱根登山電車108号、単独走行録音:車内外のレコーダー設置術 ~がんばれDR-05XP録音裏舞台~

2025年4月24日、箱根登山電車の録音に行ってきました。

今回は、何度か改修を繰り返しながらも今なお、現役で活躍する108号車両の単独走行音を録音する機会を得ました。

きっかけは、昨年秋のInter BEE(国際放送機器展)での写真家・大橋さんとの出会いでした。
大橋さんは箱根登山電車に惚れ込み、この電車を長年追い続けておられます。
これまでに箱根登山電車の写真集を3冊刊行されており、その写真はいずれも心を打つ作品ばかりです。

今回の企画はそんな大橋さんが惚れ込んだ108号車両の走行動画を記録するというもの。最新のレコーダーを使って高品質で記録したいという思いから、私たちに今回の録音の機会を与えてくださいました。
当社は、その走行音の録音を担当し、大橋さんの作品づくりをお手伝いさせていただくことになりました。

私たちはこれまで、蒸気機関車や電車の走行音を収録してきました。
車外・車内問わず、さまざまな失敗も経験してきましたが、それらの経験を生かすべく、今回も事前に綿密な作戦を練ることにしました。

 

レコーダー設置計画図

資料:大橋さん作成

 

車内と車外の両方を狙う

当社ではレコーダーを12台用意し、設置が難しい箇所については大橋さんにご協力いただきました。以下は、当社が担当した主なポジションです。

 

車外:散水タンクから台車狙い(前後)

車内:運転室内(前後)、客室内床(前・中・後)、客室内天井(右・中・左)

 

 

(設置意図と狙い)

● 散水タンクから台車(前・後) 

設置レコーダー DR-05XP      製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/dr-05xp/top

このポジションは、最も走行音に期待したい場所ですが、リスクも高いポイントです。

事前情報によれば、トンネル突入時の風が非常に強く、また、散水タンク前の連結部分が左右に大きく揺れる可能性があるため、物理的な衝撃音にも警戒が必要でした。設置位置も車両のセンターではないため、左右バランスの偏りも気になるところです。

車両の外付けの条件下では、過去の経験からDR-05シリーズが最も安定して活躍してきました。

今回は、車両のフレームにクランプでしっかり固定し、さらに落下防止のために紐で補強しテープ止めで設置しました。

新型のDR-05XP32ビットフロート録音に対応しているため、レベル設定に細かく気を遣わず、安心して収録できます。従来の手法であれば、録音レベルを変えた正副2台体制で音割れ対策を行うところですが、その必要もありませんでした。



● 客室内床(前・中・後)

設置レコーダー DR-05XP      製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/dr-05xp/top

ここでもDR-05XPを使用しました。車両前・後のポジションでは、下向きで床超しに台車の音を狙い、中間のポジションではレコーダーを上向きにして空間音を収録しています。

車外での録音が失敗した際に備えて、車内から狙う台車音の録音は重要なバックアップになります。

ここまでで5台のDR-05XPを使用していますが、すべてカチンコを用い、後で音合わせできるようにしています。DR-05XP以外のレコーダーについても同様にカチンコを同じタイミングで録音しました。


● 運転室内(前・後)

設置レコーダー FR-AV2        製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/fr-av2/top

ピンマイク TM-10L             製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/tm-10l/top

オプション AK-BT2              製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/ak-bt2/top

設置レコーダー DR-07XP      製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/dr-07xp/top

このスペースは非常に狭く、通常のレコーダー設置では対応が困難でした。そのため、FR-AV2をすき間に落とし込み、ピンマイクを2本、テープで固定してステレオ録音をすることにしました。ピンマイクは運転台の右前・左前に設置し、マスコンハンドルやブレーキハンドルの操作音を狙います。また、DR-07XPも右手方向からバックアップとして録音を行いました。

FR-AV2はオプションのAK-BT2を装着し、コントロールアプリで制御と録音状況をモニターします。カチンコに加えてタイムコード同期も行っています。

 


● 客室内天井(右・中・左)

設置レコーダー DR-10LPro   製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/dr-10l_pro/top

オプション AK-BT1              製品概要はこちら→https://tascam.jp/jp/product/ak-bt1/top

 ここにはピンマイクレコーダーのDR-10LProを設置しました。

DR-10LProはモノラルレコーダーであまり、フィールドレコーディングには使われないと思いますが、小型であるメリットと複数台が連携して動作する機能を使って試してみることにしました。

車内アナウンスをスピーカー越しに空気録音する中央とステレオ感を補完する左右一つずつの計3台を設置しました。

DR-10LProにもオプションのAK-BT1を装着して、コントロールアプリで制御の連動と録音状況をモニターします。こちらもカチンコに加えて、新しいファームウエアV2.00の新機能でタイムコード同期もして後の編集に備えています。

運行上の都合で、車内アナウンスは中止となり残念でしたが、左右に設置したレコーダーのおかげでドアの開閉音においては非常に良好なステレオ素材ができました。

マイクはすべてテープで固定し、レコーダー本体は荷物棚に面ファスナーで設置しています。

 



 

各機器の設定内容

 

 

鉄道録音は意外と体力が必要です。設置も時間との勝負になるため、準備の段階から緊張が走ります。今回は事前に3月に設置リハーサルを行い、前日にも予備的な設置時間をいただきました。

万全の設置体制を整えたあとはレコーダーに任せるだけですが、ここからもうひと仕事です。私たちは決めておいた撮影ポイントへ移動しながら、電車を追いかけたり待ち受けたりします。坂道の上り下りや斜面での待機姿勢の維持など、かなりの体力が求められます。

最終的に私たちはくたくたになって帰社しましたが、後日確認したレコーダーの音源はいずれも十分なものでした。現在は編集作業の真っ最中です。近々、皆さまに TASCAM YouTubeチャンネル やタスカム録音部のYouTubeチャンネルにて動画をご紹介いたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

最後になりましたが、ご協力いただきました小田急箱根のみなさま、写真家の大橋さんには感謝するとともに、改めてお礼申し上げます。

 

TASCAM YouTubeチャンネルはこちら↓

https://www.youtube.com/@tascamjp

 

タスカム録音部のYouTubeチャンネルはこちら↓

https://www.youtube.com/@tascam_rokuonbu

 

箱根登山電車についてはこちらのホームページをご覧ください。↓

https://www.hakonenavi.jp/hakone-tozan/

 

写真家・大橋さんのホームページはこちらをご覧ください。↓

https://www.fumiaki-ohashi.com/






 

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