ちょうど一年前、あたふたしながらようやくのことで録音したことが思い出されるが、こんなチャンスをもらえるのは本当にありがたい。
重連運転とは前に2両の機関車を連結して客車を牽引することで、非常に珍しいケース。昨年の収録時は前で蒸気機関車が引っ張り、後ろでディーゼル機関車が押すというプッシュプル運転だった。新しい大樹の整備が進んでいるとは聞いていたが、車両が増えるとこのような連結パターンが可能になる。最近では展望車両も増えて、ますます、楽しみ方が増える。
我々は収録プラン立案と機器の準備にかかった。
今回の狙いは重連運転の通過音の醍醐味を抑えることに尽きる。
通過音の収録は現場での機材設置に時間がかかることを考慮し2班に分かれて収録に挑む。
ー収録プランー
1班は通過音を狙う。
通過音はダイナミックレンジで優位となる32bit float 録音ができる新製品Portacapture X8をメインの収録機として、サブ機はDR-05Xを複数台使用。一眼レフやムービーなどで動画も抑える。
2班は車内と車両設置の走行音を狙う。
小型レコーダーの機動性を生かし、橋梁の下などでの仕掛け録音も行う。
通過音はダイナミックレンジで優位となる32bit float 録音ができる新製品Portacapture X8をメインの収録機として、サブ機はDR-05Xを複数台使用。一眼レフやムービーなどで動画も抑える。
2班は車内と車両設置の走行音を狙う。
小型レコーダーの機動性を生かし、橋梁の下などでの仕掛け録音も行う。
DR-05Xは前回の実績である程度の録音レベルの設定値がわかる。重要なポイント(車掌車両前)では録音レベルを変えて2台の録音を行うが、あとは経験値でレベル設定し橋梁の下などへ仕掛けて録りっぱなりにしておく。車掌車両前は重連運転の連続汽笛が録音できるに違いない。
昨年の心残りといえば、車内のアナウンス音の録音だ。車内の収録は難易度が高い。
狙いをアナウンスに絞れば、走行音がぼける、走行音によせれば、アナウンスが遠くなる、それにくわえて乗客の声もまざる。ワンポイントで録音するには非常に厄介な場所だ。今回は試運転ということで無人の客車にアナウンスが流れる絶好の機会ということもあるが、おいしいところは複数のレコーダーで総がかりで抑え込みにかかる。これは大きな挑戦だ。
客車に乗っているといろいろな音が聞こえる。人の耳には聴きたいものに集中して聴くという能力がある。これはカクテルパーティー効果といわれているが、誰しも経験があるだろう。
アナウンスがあるときはアナウンスを聴き、ないときは走行音や外で揺れる樹々の音まで聴いてしまう能力のことだ。逆もしかりで聞きたくない小言はスルーしてしまう。
車内の楽しみを伝えるのは難しいと思うが、考えられる音は凝縮しておきたい。
ー両班活動開始ー
通過音の収録地は東武鉄道さんや土地の所有者さんとの調整で、倉ケ崎SL花畑、東武鬼怒川線新高徳駅、東武鬼怒川線砥川橋梁の3カ所に決まる。
まずは、出発前に機関庫で車掌車両前へレコーダーを設置(走行音収録用)、客車内には複数台数のレコーダーの設置(車内アナウンスを収録用)を済ませ、二手に分かれて1班は第一収録地の倉ケ崎SL花畑に向かう。下今市駅から倉ケ崎SL花畑は距離が近くすぐに列車が迫ってくる。大慌てで現地へ向かい通過を待ち構える。
重連試運転の噂はすでに広がっており多くのファンも待ち構えているなか、豪快な汽笛の連呼が鳴り響く。重連運転は音でこそ残すべきものであると実感した。
【車掌車両前の設置】・・・音源は鬼怒川温泉への旅(車外編)でお楽しみください。
【客車内の設置】・・・音源は鬼怒川温泉への旅(車内編)でお楽しみください。
不採用にはなったが、マルチレコーダーでの収録にも挑戦。客車内にケーブルを引き回すなどはめったにできるものではない。続・車内編に続く。
【倉ケ崎SL花畑での収録】
倉ケ崎SL花畑では、Portacapture X8の筆おろし。
Portacapture X8は録音フォーマットを32bit float/96kHzに設定、あとは プリセットのアプリランチャーシステムで乗り物モードに設定。GAIN LOWモード、リミッターON、ローカットフィルターOFFに設定。サブのDR-05Xは録音フォーマットを最高音質の24bit/96kHzに設定。リミッターON、レベル30前後程度に設定。
ーアプリランチャーシステムー
Portacapture X8にはアプリランチャーシステムという新機能があり、さまざまな用途に合わせた録音プリセット(チャンネル、レベル、フィルター、ノイズゲートなど)が用意されています。今回の場合はフィールドレコーディングのなかから、乗り物モードを選びました。このモードは乗り物(鉄道)の走行音のような大きな音も歪まずに録音するためにGAINはLOW、突発的な音(汽笛など)による音割れを抑制するためにリミッター機能をONという考えです。
【東武鬼怒川新高徳駅での収録】
ホームでの三脚使用は禁止だ。特別な許可をいただいて収録を行う。社内の業務連絡でも厳しいやり取りが行われている。運行に影響が出ないよう緊張感が走る。
このシーンはプロモーション動画のエンドロールに採用。
【東武鬼怒川線砥川橋梁での収録】
2日目、東武鉄道さんと土地所有者さんの計らいでとっておきのポイントへ案内される。
時間的には余裕があったが、今度は天候との戦い。時折そぼ降る雨から機材を守り、ひたすら通過を待つ。どうか通過時はやんでくれ。
ー続・車内編ー
前回の心残りは総がかりで抑え込む。
目的の音源を抑えるため、5台のレコーダーで役割を分ける。アナウンスはスピーカー越しの雰囲気のそのまま抑えるためにあえてモノラルレコーダーを採用し、臨場感は3台のステレオレコーダーを要所に配置し収録する。
【アナウンス担当 DR-10SG】
【臨場感担当 DR-07X】
客車内の中央付近の響きを収録。
【臨場感担当 DR-05X DR-07X】
車両連結カ所をDR-05X、車外の効果音をDR-07Xで狙う。
ーレコーダーや脇役のメンバー紹介ー
ーあとがきー
昨年に続き2回目ということで、目的に応じたレコーダーの選定、ファイル管理方法、録音設定など十分な準備ができたがゆえに、逆に大変な収録作業にしてしまった。
結果的に失敗した録音もあるが、保険枠とチャレンジ枠などでの目線で役割分担を決めて、できるだけ機器を減らすことが望ましい。今回はチャレンジ枠が少々多すぎたようだ。
客車内の音源編集はこのあと、壮絶な作業となった。
「SL大樹 重連試運転を録る ~ティアックレコーディングクラブ 活動報告~」を読まさせていただきました。SL大樹の迫力とティアック殿製レコーディングの良さが実感しました。先月DR-40Xを購入したばかりですがCTP対応の新製品Portacapture X8もほしい!
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